昨年の秋に手掛けさせていただいた武蔵野市吉祥寺の庭の二期工事が終了しました。
今回の仕事は、家族4人分の自転車の置ける駐輪場と裏庭の庭づくり。
二期工事は嬉しいものです。前回の庭の雰囲気と繋げ馴染ます事ができ、敷地の外部空間を
トータル的に庭として無駄なく活かす事を目的として住環境を整えることができます。
最終日、作業が終わったのは西からの日差しが優しい時間でした。
大きな窓と大きな土壁風の壁を持つ外観に木漏れ日が映ります。
季節や時間によって織りなす影も、大きな庭の演出の一部であり見せ所のようです。
ウッドフェンスはリビングからの目隠しの要素で少し高めに設定をしていますが、
角度に変化を付け高低差を付ける事により圧迫感を軽減させ馴染ませています。
植栽もフェンスの前後に配置する事で樹木が重なり合い、フェンスだけでは隠しきれない所を
柔らかく、さり気なく目隠しの役目を補ってくれています。
建築と色を統一する事で違和感なく感じられました。
門の扉を開け玄関に導くアプローチ。
緑のトンネルを抜けて玄関に向かいます。
リビング前の主庭はコナラを中心に空間を広く取り、
ゆったりとくつろげるスペースにしてあります。
そこを抜けると、
山道を思わせる園路と続きます。
写真にはうまく写らないのですが、園路の高低差はかなりあります。
学校や幼稚園から帰ってきた二人の子供と友達達が何周も庭を駆け巡るのですが、
この起伏のある小道を、「ジェットコースターみたいなんだよ」と
息を弾ませながら話してくれました。
そして、水がたまったりする箇所も意図的につくってあります。
わずかな園路ですが楽しいものです。
山道の園路を抜けると裏庭に出ます。
物置のある裏庭はコンポストを中心に構成してあります。
コンポストは廃材でつくった簡単なものですが、
この空間にはラフな感じのものの方があったと思っています。
庭の中は落葉樹の樹木でほぼ構成されているので、
落ち葉を集めていただきコンポストで土に還し肥料として庭に戻していく循環型の裏庭です。
草屋根はやってみたかった仕事のひとつでした。
今回は駐輪場でしたが、物置や屋根付きのテラスなど大きく展開できるアイテムになります。
駐車場奥に設けた駐輪場の骨組みは極力シンプルにしてあります。
屋根の勾配角度の決定に少し悩みましたが、良い角度でうまく収まりました。
屋根は野芝をベースにイチハツやアヤメ、ススキなどを織り交ぜています。
メンテナンスは年一回、年末に刈り込んで整える程度。
将来的には野芝がなくなり雑草で覆われると思いますが、鳥に運ばれてきた種などから
植物が育ち馴染んでくれると面白くなります。
照明もセレクトして取り付けました。現在は40ワットのシャンデリア球が付いています。
あまり明るすぎる電球ではなく、ほのかに明るい程度の方が雰囲気がまします。
屋根とフェンスとの間から見える隣地の竹林も、眼に優しく絵画のように写ります。
作業中から通りがかる方々から声をかけていただきました。
『あの馬小屋みたいな建物はなぁに?』
意識の中になかった馬小屋と言われ、嬉しさがだんだんと込み上げてきました。
子供たちが、学校から帰ってきて、家の周りをぐるぐる何周も駆け巡るという
設計の時点で狙っていた事が、実際に行なわれると本当に嬉しくなります。
決して庭の面積としては広くはありません。しかし敷地を無駄なく統一していけば、
かなり庭として有効に生まれ変わり、家と庭の相乗効果で心地の良い暮らしが得られると思います。
純粋に庭で子供達が夢中になれる空間になったかどうかは、子供達にしかわかりませんが、
庭を通してさまざまな思い出が刻まれる事を願っています。
お友達がきたり、もう少し大人になっても、庭をぐるぐると駆け巡ってくれると嬉しいですね。
そして、ここでは雑木たちが落とした葉もコンポストで醗酵させ、
毎年ぐるぐると堆肥として庭に還元して循環させることができます。
楽しく熱中して打ち込む事ができました。
このような機会を与えていただき、心より感謝いたします。
ありがとうございました。(F)