深田さんを訪ねた後は、すぐ近くの鴨川和棉農園に立ち寄りました。
日本には、日本の気候風土に適した日本綿(和棉)がありますが、
現在は大量に農薬を使用する輸入綿に依存しているために、日本綿は絶滅の危機に瀕しています。
こんなきれいな花が咲きます。
洋綿は、実が上を向いて割れますが、和棉はこのように下を向くため雑菌が入りにくく、
病気にも強いため農薬を必要としません。
庭でも、なるべく潜在自然植生を踏まえながら、風土に合った自生する木を
使うことが、何よりも健康な空間づくりに欠かせないと思っています。
そのお隣には、旧水田家住宅が残されています。
力強く組まれた石組みと重厚な長屋門です。
そこをくぐると茅葺きの寄棟造の母屋が、どーんと居座っています。
茅葺きの屋根の中で、南面には瓦葺きの下屋が差し掛けてあり、
それが房総民家の特色のようです。
大山千枚田です。
田を耕す人が絶え荒れ果てていたこの地は、オーナーを募ることで、
こうして維持することができています。
ここは日本で唯一雨水のみで耕作を行っている天水田です。
今回の台風でも洪水や土砂崩れの心配は尽きませんが、
棚田には、生物の多様性を支えたりする他に、
洪水などの災害を防止するなどの多面的機能があります。
棚田のあぜ道へ足を踏み入れると、歩みを一歩進める度に飛び跳ねるものがありました。
このトノサマバッタの道案内に導かれるように、奥へと進むと、
収穫を終えた稲が天日干しされていました。
乾燥機の普及につれて、この「はざがけ」の風景は一時期減りました。
しかし天日干しによる効能は高く、ただ郷愁を呼ぶ美しい風景というだけではなく、
用と美を兼ね備えた暮らしの方法であり見直されてきています。
残暑が厳しくても、この曼珠沙華は彼岸花という別名に忠実に、
お彼岸という暦に正確に出てきます。
温度に感応するのではなく、月の進行などと関係があるのでしょうか。
この後、高田造園設計事務所が設計施工された庭を見に行きますが、
その様子は、次のブログ「人が集う空間」をご覧ください。
見たいところを全て見終えて、最後に向かったのは、
「うつわや+cafe 草 so 」です。
日々の暮らしをさりげなく彩ってくれそうな器達を見せていただき、
シンプルで気持ちのいい店内で喉を潤わせていただきました。
ここも棚田を見下ろす高台にあり、窓からの景色にみとれながら、
自然の豊かな中での暮らしを始めた「草」の素敵なお二人との
お話が心地よかったです。
今回の小旅行で、とても印象に残っているのは、
お会いした方々の顔がとてもきらきらと輝いていたことです。
今までの幸せの物指しとは違う価値観で生きる暮らしが、
いろいろなところで芽吹いているようですが、
鴨川は、中でも、とても先進的な地域の一つのような気がしました。
ここには消えつつある懐かしい風景ではなく、
取り戻しつつある、これからの美しい暮らしがありました。(T)