私の友人であり、良きライバルでもある高田宏臣氏(高田造園設計事務所)
の新作の仕事を見せてもらいました。
高田さんは環境意識も高く、良い庭とはなにか?良い空間とはなにか?
と自問自答を繰り返しながら、常に進化し続けている作庭家です。
口癖のように「ひとつの大きな森として、山と都市とを繋げていきたいと」語っています。
そして今、夢への大きな一歩として、幾つかのプロジェクトも進んでいるようです。
6月下旬に完成したこの庭は、どうしても見ておきたかった庭のひとつです。
この空間は写真には写らない空気感を肌で感じさせてくれます。
もともと棚田であったこの土地は、自然に囲まれており絶好のロケーションです。
そのロケーションを借景として、自然にさりげなく植栽で繋げてあります。
石積みも棚田のそれを思わせる、ざっくりとした積み方で隙間からシダやリュウノヒゲなどの
下草が顔を覗かせています。
ストーブ用の薪置き場と、小さなスペースではありますが、
季節の野菜たちが玄関アプローチ横にあり、来客する人たちの眼を楽しませてくれます。
この土地は薮であり足の踏み場もなかったそうです。
その中に大きな榎が群れて点在していて、かなり珍しい光景です。
「この榎に惚れ込んで土地を購入しました。榎は一里塚にも植えられ、大きな木陰をつくり旅人や
地域の人々の集う場所であったそうよ。」と嬉しそうに奥様がおっしゃっていました。
薮だらけで周りの人たちが心配していたこの土地を、良くなると見抜いて実行し、
そして今、すばらしい環境に整っています。
地域の人たちとの新年会など、様々なイベントを行なうこの空間に身を置いて語らうと、
時を忘れ名残惜しい気分になります。
居心地のいい空間には、決して自然に逆らわない、
建築と庭とその周りの環境がひとつになった時に感じられる
やさしい空気に満ちた世界が広がっていました。
突然の訪問にも拘らず、笑顔で向かえていただき、貴重なお話をまで聞かせていただきました。
感謝感激致しております。ありがとうございました。
良い刺激を貰った帰り道、さわやかな風が吹いていました。
良い空間にしていく為に、何をすべきか?
糸口が見えてきたような一日でした。(F)