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8年目の手入れ

この日の現場は千葉県市原市。

朝五時半に府中の事務所を出発し、車中で睡魔に襲われる頃、

市原の山中は霧の中でした。

この絵は、川合玉堂の「溪雨紅樹」

(山種美術館HPよりhttp://www.yamatane-shop.com/product/335

ですが、庭が完成して八年目の手入れをしに、霧中の現場へ到着して見た風景は、

この絵を想起させました。

現場へ到着すると慌ただしいもので、霧に霞んだ幻想的な風景は写真に収められませんでしたが、

これは、それが微かに残る様子を朝の一服の時間に撮ったものです。

この地では、木々を伸び伸びと育てることができるので、自然樹形を損ねることもなく、

八年の歳月を経て、より健やかになってきています。

そして、この写真は翌日の手入れ終了後の写真です。

このカットでは、分かり辛いですが、トラック一台分の枝下しをして、

かなり光と風が通るようになっています。

この庭は、都内在住の庭主さまの別荘ですが、

近所に住まう80歳にもなるおばあちゃんが、時々カブに乗って颯爽とやってきて、

林床を清めてくれています。

そんな風にして大切に慈しまれている庭は、一年ぶりに手入れに訪れても、

全く荒れた感じがなく、雑然ともしていなくて、むしろ清涼感に包まれています。

現場へ着いてもとても気分がよく、枝下しのピッチもぐんぐん上がります。

作業後に、流れへ水を流す時間は至福の一時です。

この写真からは、木立の雰囲気と庭の清潔感が伝わるのではないでしょうか。

私達の手入れはほんの一助で、この状態を保っている最大の功労者は、

さきほどの80歳のおばあちゃん、野口さんです。

とても若くて、元気で、明るくて、こんな風に歳を重ねたいと思わずにはいられない

素敵な方で、なんともいえない良い顔をされています。

なので写真を撮って載せたかったのですが、叶わなかったので、来年こそはと思っています。

かつて「照葉して名もなき草のあわれなる」と詠んだのは富安風生ですが、

この庭にある雑木と片付けられてしまう名もない木々を愛で、

私達もまだ少し早いながらも、紅葉狩りをしてみました。

とはいっても、ちゃんと、それぞれ立派な名を持っているもので、

以下に挙げた写真に写っている木々は庭にある沢山の木の一部です。

ドウダンツツジ、ダンコウバイ、ジューンベリー、ナンテン、コハウチワカエデ、

ハウチワカエデ、ムシカリ、リョウブ、オオモミジ、ヒサカキ、アブラチャン、マユミ、

ツバキ、ミヤマガマズミ、カラスウリ、ソヨゴ、ニシキギ、クロモジ、ヤマコウバシ、

サワフタギ、オトコヨウゾメ、ギボウシ、ハラン。

まさに色とりどりです。

ダンコウバイの葉とカラスウリの実を持ち帰り、

こうして部屋に飾ってみるのも一興かもしれません。

この市原の庭は、作庭例の中のギャラリー・KN庭(http://fujikurazouen.com/gallery)

でも紹介しています。

是非、ご覧ください。(T)