温かな日差しの中で、冷たいけれど柔らかな風が桜を散らし、
その足下では、寒い冬を耐え抜いて春を迎えた草花が、
人知れずひっそりと咲いていて、その儚さからちょっとした悲しみを抱きます。
味噌作りは、「寒仕込み」といって寒い間にやるのが雑菌が繁殖しにくく最適といわれていますが、
毎年、なんだかんだで、桜の開花に焦るかのように、この時期にしてしまいます。
とはいっても、無農薬無化学肥料の大豆・トヨムスメに「寺田本家」の米麹で仕込んだ味噌は、
毎日の食卓には欠かせない美味しさで、速醸された市販の味噌とは比べられません。
美味しいだけでなく、このような醗酵食品は体調管理のためにも絶対必要で、
他のやりたいことを我慢してでも絶対作るようにしています。
ここは、多摩市のIB庭。
そして、こちらは、練馬区のAK庭です。
どちらも、引っかき傷のあるレンガや、でこぼこの石材などの材料を使用し、
その傷があることで壁に層を作り、微妙な陰影を生む効果を狙っています。
そんな光と影が生み出す重層性を、数々の建築で表現したF.L.ライト。
そんなライトの建築は日本で四カ所残っていますが、その中でも「明日館」は身近な存在で、
講演会を聞きに行ったり、コンサートを楽しんだり、散歩の途中でお茶をしに立ち寄ったりと、
ここのところよく訪れています。
ライトは、当時の明治建築が重んじた格式や重厚さをぬぐい去りたかったのではないかと
言われています。上流階級の社交場ではなく、観光客がくつろぎ、市民が一杯のコーヒーや
宴会を楽しむ近代ホテルの時代の到来を旧帝国ホテルは告げました。
自由学園の教育理念には、
「自分で考えることを大切にし、実物に即し、本物に触れ、よく身につく勉強を目指」すとあり、
そのカリキュラムにも農業などが盛り込まれ、
ライトが若い人達を育てた場「タリアセン」の理念とも共通項があります。
建築も庭も、住人の愛情に満たされてはじめて、
建築や庭が「住まい」となることを実感していたライトと自由学園の希望通り、
今も市井の人々に解放されていて、その恩恵にあずかることができます。
庭も建築も、季節や天候、時間帯や光の加減によって、全然違う感じ方をするものですが、
ライトアップされた「明日館」と夜桜の中で、ボサノバを聞きながら飲むビールは最高でした。
ライトは安価な住宅を、それよりも高価な住宅の質に迫るものをいかに供給できるかに苦心し、
そこから生み出されたのが、平均的なアメリカ人のライフスタイルに合わせて設計された
「ユーソニアン・ハウス」です。
ここ「明日館」も予算不足の中建設されたものが文化遺産となっていますが、
ただ単にライトだからすごいという次元を超えて、遺産以上に、
ライトと自由学園の理想が共鳴し合って、今なお息づいているという点に感じ入りました。
そんな高揚した気分をやさしく受け入れて鎮めてくれるのは、
静かに、しかし美しく佇んでいる夜桜です。
在野精神息づく大胆な発想と、そこから産まれた「有機的建築」の灯の絶えない姿を見て、
とても大きく、静かな幸せを噛み締めました。(T)