桜が見頃の時期となりました。
今年は遅い遅いと開花を待ち望んでいましたが、
入学式の時期に桜が満開になるのが本来の開花時期で、
この何年かが早すぎた開花をしていたように感じます。
穏やかな陽射しのもと、都内でもようやく満開に近い桜が見られるようになりました。
日中は、現場作業や図面書きに追われ、ゆっくりと桜を見ることが出来ませんでしたが、
夜桜のライトアップをしている自由学園.明日館を訪れました。
照明に照らされた桜は、とても美しい姿で迎えてくれました。
格調高い雰囲気に感動を憶えるこの明日館は、
近代建築の巨匠、フランク.ロイド.ライトとその弟子の遠藤新の設計です。
オーナーである羽仁夫婦の教育理念に深く共感し、設計を快諾したと言われています。
外観は『プレーリースタイル』で屋根は低く、建物は水平線を強調した平屋づくりですが、
中央棟には吹き抜けのホールがあり、大きなガラスが最上部まで設けられた
明るく開放的なデザインになっています。
開放期間中、中央棟の天井にも桜の照明がやさしく映し出されていました。
ホールではミニコンサートも開かれていました。
ゆっくりと心地よい音楽に浸りながら時間が流れていきます。
傘立てやベンチが作り付けとなっています。
照明や収納棚、窓枠や椅子などすべてをライトがデザインしたもの。
遊び心にあふれ、幾何学的な中にもやさしさが感じられます。
ライト設計の帝国ホテルの椅子と似て、六角形を基調とした椅子。
ラワン材を使用し、背もたれは六角型で革張りのシート張られています。
可愛らしい椅子の座り心地は抜群です。
ライトが日本で出会った大谷石。
内部空間と外部空間を大谷石で統一してひとつにつないでいます。
調和を大切に、連なって流動している様子を演出し、
複雑なデザインの調度品が点在している空間は、
芸術性の高さ、全体構成、細部に至るまで、
ライトが悩み、楽しみながら設計をしたことを感じさせます。
建物は使いながら文化価値を保存する『動態保存』のモデルとして運営されています。
守っていくことは様々な障害や苦労があることと思いますが
いつまでも守り継いで未来に伝えていただきたいです。
文化財を身近に感じ、今を生きている美しいライトの遺産を肌で感じ、
夜桜とともに幸せなひと時を過ごすことができました。
貴重なひと時を与えてくださいました関係者の皆様、どうもありがとうございました。(F)