昨日、今日と小金井市梶野町の現場で手入れです。
何十年と今の庭主様の前の代から、ずっと変わることなく家を見守り続けてきた赤松が、
毎年この季節になると私達を迎えてくれます。
この大きな松の手入れは、熟練の職人の技を持ってしても一人で丸一日かかります。
私達が新たに庭作りをする場合、新たに松を植えることはまずありませんが、
日本古来のこうした松の手入れも、この水準でやらせていただきます。
松はよく幹巻きといって冬になると藁を巻き付けて、春にそこに集まった虫ごと
焼いてしまう虫の駆除方法がありますが、こうしてほうきで幹をこすってやることでも、
虫に越冬させない効果がある他、幹の赤さを際立たせ美しく見せることもできます。
手入れでは、枝葉を落とすだけではなく、最後の仕上げ、林床の掃除が、
出来不出来を左右します。
私達は、燃料を浪費するだけでなく、大きな音で町の静寂を破ってしまう
ブロワーには頼らないようにしています。
柔らかいほうき、固いほうき、手ぼうきを使い分けて庭を丹念に清めていきます。
昼休みには、現場のすぐ横の畑で、とても立派な里芋とヤツガシラを作っている畑に魅せられ、
私達もヤツガシラを作っている身ですので、そのものすごい株立ちのどっしりとした芋を
栽培する秘訣を伺いに行きました。
その答えは、なるほどな〜というもので、ぜひ来年は試してみたいと思う秘訣であったのですが、
そのおじいさんが、手入れが終了する頃、里芋を一輪車で届けにきてくれました。
農薬などは一切使わず、肥料も特別やらず、藁をまいて温め、古畳で寒さをしのぎ、
昔からの方法で様々な食物を育てています。
声高にエコを叫ばずとも、本物は私達の身近なところに
静かに、しかししっかりと地に足をつけて、佇んでいるのだなあと嬉しくなりました。
お天道様が、まだ高いところから地面を照らしてくれている間に、
手入れは終わったので、ちょっと近辺を散策してみました。
11月も下旬だというのに温かい日は続き、紅葉も今ひとつですが、
忙しくて紅葉の名所に行けない私達の目をも身近な小さな小さな秋が楽しませてくれます。
庭は、なかなか本物の自然の美しさにかなうものではありませんが、
そんな場所へ、そうそう行けない私達の日常生活を潤して欲しいという思いがあって、
少しでも自然を感じたいという思いがあって、住環境を良くしたいという思いがあって、
そこで初めて存在価値があるのかもしれません。
そんな庭主様の思いに、少しでも添いたいという強い思いで、
日々、庭を引き出し、庭の手入れで、それを維持しております。(T)