私達にとって庭づくりをさせてもらった現場は様々な思い入れがあり、
引き渡しの時は寂しく、まるで娘を嫁に出すような複雑な気持ちに包まれます。
ここ町田市鶴川の現場は、以前のホームページを開設して初めての依頼で庭づくりに繋がった、
私にとって記念すべき庭です。
庭主様の故郷、九州より庭石を運び込み、変わらぬルーツを残し、
関東の武蔵野の風景を加えて新しい故郷を作りたいとの依頼でありました。
7年前に竣工をした庭は、時と共に良い環境が保たれ、雰囲気を増しています。
木々達もようやく土地に馴染んできたようで、、力強さを増してきた印象を受けました。
今年はあまり期待していなかった紅葉も素晴らしく、色鮮やかに眼を楽しませてくれます。
手入れをして照葉が落ち、色鮮やかな林床を掃いて掃除をしてしまうのが
ちょっと惜しい気持ちになりつつも、手箒で林床を清めていきます。
ただ、漠然と掃除をするのではなく、つくばい回りの石の組み方や下草の植え方など、
気にしていく所は数多くあります。
当時はこのように石を組んだのか〜など、自分の目線を下げることでしか
眼に入らないことから学ぶことも大切な仕事です。
陽が差し込み建築に樹木の影が映り、林床に木漏れ日が踊る姿は良いものです。
手の入れ方次第で大きく雰囲気が変わってしまうことを肝に命じて仕事をせねばなりません。
故郷の九州の庭はもうありませんが、7年目を迎え貫禄を増し、
ようやく新しい故郷として九州の庭と肩を並べるぐらいの雰囲気になってきています。
雑木達の成長を尊重しつつもバランス良く、自然に逆らわない手法で、
年々雰囲気を増し、いつまでも眺めていたい景色へと続いていけるよう
見守っていきたいと思います。(F)