武蔵野市吉祥寺の現場でも、秋晴れの中、やっと植栽の日を迎えることができ、
この日まで辛抱強く待っていただいたお客様には感謝の念が尽きません。
この現場は、ウッドフェンスの塗装を家と同じ色の自然塗料で施し、
リビングを囲み込むような高いフェンスを中心に、段違いのフェンスが重層的に並びます。
フェンスだけができた時は、それだけがデーンとそびえ威容を放っていましたが、
木々が入ることで、調和がとれてきました。
作庭という言葉こそありますが、庭は作るというよりは、
バラエティに富む木の特性を読み、その良さを引き出していくものかもしれません。
それらを組み合わせることによって、木々の持つリズムが複雑に絡み合って、
響き合い共鳴していきます。
午後になると、家に映し出された木々の陰が心地よい風に揺れ、
家と庭の協奏曲が奏でられます。
リビングから見ても、道路からの視線をしっかりと遮られた空間は
市中の山居を思わせます。
石臼を置いたこの場所には、庭主様のお好みで水鉢などを置いていただき、
水を貯め、メダカを飼ったり、鳥が水浴びできる場所にしたりと
自由に楽しんでいただきます。
リビング前から奥へと続く蛇行した小道は、起伏を付けて山道のようにして、
二人のお子様が駆け回っている姿を思いながら、描いていきました。
扉を閉めているとこんな感じに見える玄関へのアプローチ。
扉を開けると枕木と御影石、ピンコロ石で合わせた三和土から
奥へと続く来客用の駐車場も目に入ります。
この奥には、まだ構想段階ですが、草屋根の自転車小屋を建てる計画もあります。
そして、庭の裏側には二期工事として木を植えコンポストを作る予定なのですが、
それまでの仮設のものとして、余った材料だけで作ったこのコンポストでしのいでいただきます。
植栽当日、二人のお子さんが学校や幼稚園から帰ってくると、一通り庭を楽しそうに駆け巡って
その後は、飼育している沢山のクワガタの中からお気に入りのものを持ってきて、
この庭で一番大きなコナラの木に放してスケッチしていました。
クワガタが木を登り子供たちの背の届かないところまで行くと、
とってあげて又下の方に放すという楽しい繰り返しを何度かすると辺りはもう真っ暗でした。
一植木屋としてできることは、木を読み、そのエネルギーを引き出して、
各々が健康的に響き合っていける手助けをすることなのかもしれません。
そんな庭が権威の象徴ではなく市井の人々と密接に関わり、街に森を作ることによって、
通りすがりの人も楽しめ、何よりも庭主様ご家族の暮らしを豊かにするものであれば
植木屋冥利に尽きます。(T)