門を開けた瞬間から『深山』を意識できるような空間づくり。
毎回思うことですが、庭が仕上がっていくにつれて嬉しさと同時に
『もう終わってしまう』という切なさも感じます。娘を嫁に出す気分なのでしょうか。
このような気持ちが生まれた時ほど、自分自身も納得できていることなのでしょう。
門をくぐり左手に行くと自宅玄関、右手に向かうと陶芸工房(むくり工房)があります。
この玄関と工房をつなぐ外廊下が、この空間では一番の見所になります。
長方形の中庭を一番広く見る事ができ、
近景として大きなアズキナシを植え込んだことにより、さらに空間が広さを増しています。
目隠しなどの制約はありませんでしたが、工房に接続している廊下から
将来大きな釜を出し入れしなければならない、との話がありました。
本当に大きな大きな釜で、大人数人での出し入れとなるそうです。
釜を出し入れするスペースをつくるため、大きなテラスを設けてあります。
広いスペースを確保した事で圧迫感などもなく、しっとりと風のそよぐ空間が生まれました。
そして今回少しだけこだわったのは、粘土。
日々粘土を扱う場所であるからこそ、造園としても粘土を利用してあります。
むくり工房の室内からガラス越しに眺める景色もまた格別です。
陶芸にも数多くの工程があります。確実に妥協なく、
一つひとつ心を込めて作品へと導いていきます。
この何週間か作品づくりに向かっている姿を目の当たりにして来ましたが、
凄い集中力で圧倒されました。その姿を見て私たちも気を引き締めた次第です。
みどりが自然に眼に入り小さな森林浴のできる室内は、
気持ちが安定し、さらに集中できる工房にパワーアップしたと思います。
この工房から新たな作品が生まれてくると思うと嬉しくてなりません。
膨大な手間と愛情から生まれる作品の後押しを、
今後、生命力溢れる木々のみどりが力になってくれることを期待しています。
建築と一体になったこの空間は、家族の憩いの場であるとともに、
鳥や昆虫たちの住処にもなってくれたらいいですね。
日々の暮らしの中で、季節の移ろい、音や匂いなどを
五感で感じとり新たな発見を楽しんでくれると嬉しく思います。
竣工まで2年あまり、本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
根気よくお待ちいただき、また気持ちよく作業させていただき感謝いたします。
ありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。