現場近くにある立川の古民家で、茅葺きの修復をしていると聞きつけ訪れました。
先日、日本庭園協会東京都支部主催の安藤邦廣氏の講演会で、
『里山に学ぶ茅葺きの話』を聞き、今まで以上に茅葺きが身近に感じられるようになりました。
残していかなければいけない屋根であり、日本の風景です。
その作業をなさっている人はどんな人だろう?
年配のおじいさんかなと思いましたが、なんと若手の方が先頭になって纏めていました。
今回の作業は北側と東側の葺き替えです。
日本は湿気が多い為、苔などが乗りやすく北側の茅の方が痛みやすく、
逆に海外(イギリスなど)は紫外線が強い為、南側の屋根の方が痛みます。
葺き替えの作業はおおかた終わり、仕上げの作業、刈り込みばさみで茅を切りそろえていきます。
現場は立ち入り禁止でしたが、職人の方とお話がしたい思いと間近で見たい気持ちが先立ち、
屋根まで上がっていくと快くお話をしていただけました。
親方は若い大工さんです。
何年か前から、残さなければいけない作業だと思い、茅葺きの修業に出たそうです。
『まだまだ私の仕事は写真に写す価値はありませんよ』と謙遜して笑顔を見せます。
シャイで男気あふれるその姿は、未来に大きな希望を見た気持ちになりました。
茅葺きの刈り込み鋏は、造園の刈り込み鋏とは違い、分厚く、かなり刃先が曲がっています。
屋根が急勾配であるために角度がつけられています。
棟の模様は関東に多い「イチョウッパ』といい、イチョウの葉の形に刻んであります。
この棟仕舞い の仕方で、地方独自の工夫や特色が現れます。
『せっかくだから富士山見て行きなよ』と茅葺きの上までのぼらせてくれました。
登ってみると屋根は厚みがあるため弾力があり、下から眺めていた以上に勾配は急でした。
昔は同じような茅葺きの民家が見渡す限りに点在して、自然と人が良い関係で繋がり
風景も美しかったのだろうなぁと、富士を眺めながら思いました。
この自然の恵みを上手に利用し、先人達が残してくれた技術を何とか残していく為に
行動していく若い人たちも全国で増えてきているそうです。
私たちの仕事も、自然と向き合い、美しく風景を整えていくこと。
自然と良い関係で循環している茅葺きは、大きな大きなヒントになります。
技術的にも、造園は茅葺きの作業と共通することが多くあります。
植木屋として協力していかねばならない使命感が沸き上がってきました。
同じ職人として、良い刺激をいただきました。
突然の訪問にも関わらず、良いお話をありがとうございました。(F)