庭作りの依頼をしてくださるお客様達は、庭に様々な夢を抱いています。
花畑に憧れていたり、芝生の庭を夢見ていたり、
私達の得意とする雑木の庭を希望されていたり、
お話を伺っている時間は本当に楽しいひとときです。
その夢に少しでも近づける事ができ、なおかつ愛情を持って接していただけるように
飽きのこない、年々環境の良い空間にするにはどうすべきかと悩み考えている事は
非常に苦しく大変な事なのですが、同時に楽しくてしょうがない瞬間でもあります。
こちらの庭主様も色々な夢を語ってくださいました。
そして「蛍が庭で舞っていたら嬉しいな」の一言から全ては始まりました。
敷地内に井戸を掘ることから始め、その水をうまく利用して蛍を孵す環境にしていきます。
和の要素と山の源流付近の自然な雰囲気を併せ持った庭が条件です。
循環させるため水を漏らすことはできず、コンクリートを分厚く下打ちした人工の川ですが、
見た目は自然そのものの渓谷と見紛うできであると自負しています。
ただ、少しでも庭を自然に近づけたいと思いながらも、やむを得ずこうした工法を
取ってしまうことはとても心苦しいことです。
工期やコストの面、絶対漏らせないという心配からの判断なのですが、
古来から工法で川底を粘土とグリ石を使って仕上げる方法があり、
それなら自然の状態に近く、呼吸のできる流れを作ることができるので、
今後、チャンスがあればやらせていただきたいと思っています。
工事を始めた当初の写真です。
おおよその図面しか書かないのが私のやり方です。
図面に縛られず、その場その場で当初のイメージを超えて、
木や石達が適材適所に収まっていく様はなんとも言いようがなく、庭作りの醍醐味です。
流れの川底の表面は自然の渓流のように化粧していて、
その上には落ち葉がいい感じで堆積して、やがて土に戻っていきます。
その土や腐葉土をカワニナは好みます。そのカワニナを蛍の幼虫は食べて成長していきます。
何年かかけてゆっくりと蛍の育つ環境を整えていく予定です。
当然、無農薬での庭管理となります。
決して簡単ではないと思いますが、この庭から様々な生命の営みを感じながら
素晴らしい生態系が築かれる事を信じ、人と生物達の共生が成り立ち、
自然の息吹を感じながら暮らすことができたら素晴らしい事です。