藤倉造園設計事務所

時と共に

記録的猛暑となった2010年夏、明星大学青梅キャンパスにて土塀講習会が開かれました。

安諸庭園・安諸定男氏の指導のもと全国から駆けつけた庭師は総勢約120名。

あれから1年、その後の土塀を見てきました。

拡大時のタイトル

荒木田土は亀甲形にひび割れカチカチに固まっていました。

何カ所か軽く崩れていて、下地の竹小舞が出ていましたが、それが何とも美しいです。

今改めて見てみると、腰積みのラフな感じと土塀の高低や長さのバランスがよく、

時間的なこともあって仕上げ塗りまでは出来ませんでしたが、

それがかえってこの空間には合っていると感じました。

現在土塀の表側には榊原八朗さん(明星大学教授)指導のもと、学生たちが庭を作っています。

つくばい流れの形式で、池に水が流れ落ちる計画のようです。

植栽も雑木を中心にしてあり、周りの山と同化して土塀も際立っていました。

土塀は造園のひとつのアイテムですが、植栽や水の動きなど様々なものを、相性の良く組合わせることによって、

空間性が生まれ良い空気が流れていくのでしょう。

この土塀は、時と共に風合いの魅力を増すものだと思います。

私達も、老いることに抗うのではなく、美しく歳を重ねていけたら良いなと思います。

スケール感

昨晩、『大北望作品刊行記念特別講演会』が開かれました。

日本を代表する造園家、姫路の大北美松園・大北さんの作品集が発刊されたからです。

写真家、信原修氏が撮りためていた写真を中心に、作品解説、作品図面集、作品論など、

大北さんのこれまでの集大成が凝縮されており、実に見ごたえのある一冊になっています。

講演会では、日々苦労し格闘して重ねてきた40年数年の経験を7つの格言とも言える言葉で庭のスライドと共に、庭を創る者にとってなくてはならない精神的なこと、技術的なことだけではなく、庭との向き合い方などを、生きた言葉で熱く語っていただきました。

住宅庭園規模の1:50や1:30のスケールはある程度経験を積んでいけば誰でもできるといいます。1:300など、何千坪何万坪のスケールになると図面を読み取りすべての絵が描けていて、それを実行する力を持ちながら臨まないと納得はしてもらえないのかもしれません。

庭は現場合わせの箇所が多々あるため、設計変更がつきものです。ゼネコンの設計者と同じか、それ以上の立場で議論を重ね納得させていくには、相当な苦労やストレスがあり孤独であったと思います。今までの経験と日々の努力で裏付けた自信がなければ負けてしまうでしょう。

大北さんには負けてしまわない自信と、自分を追い込み常に新しい物に挑戦すること、そして何よりもお客様に喜んでいただこうとする遊び心が庭に溢れています。

すべてが、良い空間になり、すばらしい雰囲気に包まれるように格闘していました。

講演最後にポツリと言った「もっと異端児になりたい」という言葉が印象に残りました。

これからもすばらしい空間を作り続けて、若手の目標でいてください。

この度は、作品集発刊、おめでとうございます。(F)

それぞれの夏

陶陽庭の雑木林です。

今日は、下枝を払い、下草を刈り、すっきりさせました。

木漏れ日がきれいです。

今が盛りの玉あじさいです。

その名の通り、玉のような、ボールのような莟からこんな花が咲きます。

ハンミョウも陶陽庭の住人です。

この流れは、私達の手で作ったものですが、

こうして、いつの間にか沢蟹なども棲息してくれるようになりました。

ここ陶陽庭では、人と自然が共存して、

ちょっぴり農的な暮らしをしています。

畑では、ヤツガシラを育てています。

一霜浴びた十一月くらいには収穫できます。

里芋との違いは、茎が赤く、より大きいことです。

この茎は、ずいきと呼ばれ、干すのが面倒ですが、とても美味しくいただけます。

連日の雨で、山から引いている水もとても豊富です。

一服の絵画のような静寂荘からの眺め。

みょうがの花です。

花を目印にすると、わかりやすいですが、

本当は、花が咲く前に収穫した方が、美味しいようです。

こんなに採れました。

丸ごと焼いて、味噌を付けて食べると、とても絶品でした。

遊休地だった土地を買い取り、十年くらいかけ、雑木林を育て、

少しでも自然に近づけようと奮闘してきました。

この里山では、それぞれの生き物たちが、夏を謳歌しています。(T)

雨との響演

現場へ向かう道中には、とても心の安らぐけやき並木があります.

ぶつ切りにされてしまう街路樹が多い中、その木本来の樹形を保っているので、

強剪定に反発して、枝がブワーッと出ることもなく、

葉がそよそよと気持ちよく揺れています.

現場の近くには、ひときわ高い大木が一本そびえていて、

作業を見守ってくれていました.

昼休みに、その方角に行ってみると、庭木がきれいに手入れされたお寺があり、

その銀杏からは、乳状下垂とよばれる気根が多数ぶら下がっていました.

銀杏の老木が、なぜ、このような形状になるのかは、わかっていないようですが、

雄株だけの現象のようです.

そして、現場では、この雨の中、様子を見つつ作業を進めました.

三和土は、ある程度固まった後、削り出して、より良い質感へと仕上げていくのですが、

その過程の中で、今回は、雨の足跡をも味方につけてのものになりました。

自然の造形を生かした、雨との響演といったところでしょうか。

構造物は、おおかた完成したので、今後、暑さが和らぎ次第、

植栽を始めます.(T)

玉堂

多摩川の上流にたたずむ玉堂美術館を訪れました。

日本画家の巨匠、川合玉堂が青梅市御岳で晩年を過ごしたのを記念して建てられた美術館です。

建築は吉田五十八氏、庭園は中島健氏と日本を代表する人たちで設計されています。

庭園はシンプルな構成ではありますが、周りの山を取り込み壮大な景色が広がっています。

雑木と花との自然観を得意としていた中島健氏の作風とは違い、本当にシンプルです。

その土地の置かれた環境や空気感を大切にして、この空間は生み出されたのでしょう。

美術館の中には、玉堂が16歳、18歳の頃に描いた写生があり、

それが驚くほど精密に描かれていて、目を奪われました。

基本がしっかりとしているからこそ、歳を重ねて、画風が変化したりしても、

作品に品と深みが出るのかもしれません。

庭も同じで、基本をしっかりと押さえないと、人に感動を与える空間は生み出せない気がします。

自然と共につつましく生きる人々の姿があるのが玉堂画の特色であり、

自然以上の自然を描き出すと評されますが、そんな神の領域には及ばずとも、

せめて、少しでも美しい自然に近づきたいと、

日々庭づくりに精進しています。(F)

森の妖精

古くから霊山として崇められ、植物を始め野鳥や昆虫の宝庫として知られる御岳山を訪れました。

あいにくの雨模様でしたが、霧が巻き幻想的な景色を見ることが出来ました。

私の好きな野草、レンゲショウマが今盛りを迎えています。

写真はちょっとピンボケしていますが、かわいらしい花がクマザサやシダなどの下草を押しのけ、

群れをなして咲いています。

幾度か庭にレンゲショウマを植えたのですが、なかなか難しいようです。

標高や夜露など取り巻く環境が山と街とは違いストレスなのでしょう。

植物にとってストレスのない環境づくりに力を注がなければなりません。

御岳山山頂には武蔵御嶽神社があり、神秘的な空気に包まれています。

写真の本社本殿は神明造で、現在ではパワースポットになっています。良い力を貰いました。

明日からの仕事に活かしていきたいと思います。(F)

まだ見ぬ庭の構想

猛暑の中、お盆休みをいただいて、体の方は骨休めをさせていただきました.

ありがたいことに、お盆明けにも、より良い空間への変身を待っている庭があります.

日頃、なかなかまとまった時間をとれない中、このお休みでは、

そんなまだ見ぬ庭の構想を練る時間とさせていただきました.

この図面に基づきながらも、実際に現場の風を感じつつ、

さらに良い方向へと、臨機応変に庭づくりに励んで参ります.

世田谷区岡本の庭 再訪

4月に完成した庭に、仕事帰りにちょっと寄らせていただいて、表札を付けてきました.

下草のセキショウが伸びて、石臼を見え隠れさせ、いい雰囲気になっています.

こちらのお宅では、落ち葉や花柄拾い、草取り、水まきと丹誠を込めて面倒を見ていただいているので、

完成当初よりも、状態が格段に良くなっています.

三和土には、うっすらと苔が乗ってきました.

暗くなる頃に、水を打ち、明かりを灯すと、料亭のような佇まいです。

表札は倒れないように、下の石に固定し、こんな感じになりました.

作り手として、再訪して、とても嬉しくなる庭でした.

今後も、どうぞ、よろしくお願い致します.(T)

横浜市都筑区の庭 始動

こちらのお客様の庭では、依頼していただいてから、10ヶ月越しでの工事着工となりました.

私たちを、信頼してお待ちいただいた気持ちに応えるべく、誠心誠意取り組んで参ります.

枕木とレンガと三和土でテラスを作っていくのですが、その枕木は、実際に鉄道の枕木として使われていたものです.

なので、「片開き分岐」などと、当時を忍ばせるプレートもちらほらと残されています.

ここは、菜園あり、落ち葉コンポストありの、庭の中で、小さな循環をしていけるように

デザインしています.お盆休み前に、大まかな骨格ができました.

明けには、構造物は完成させますが、植栽はこの猛暑の中では傷みやすいので、気候が落ち着いてからの

ことになります。

どんな庭ができていくか、私たち自身も楽しみですが、今後もその様子をご報告させていただきます.(T)

ホームページ、リニューアルしました.

この度、ホームページのリニューアルに伴い、ブログを始めることにしました.

お客様の庭で、当社の陶陽庭で、旅先で、

日々の庭から感じることを、書き留めていきたいと思っております.

どうぞ、よろしくお願い致します.(T)