この写真は、このホームページのトップページに使っている写真です。
この白い泡は何だろう、または、カマキリの卵かなと思った方もいるようです。
実は、これは山梨県上野原市・陶陽庭の池上の枝に産みつけられた
モリアオガエルの卵です。
日本には約35種類の蛙がいて、そのほとんどは水辺の近くで暮らします。
しかし、このモリアオガエルは、水辺から離れた林や、深い森の木の上で暮らします。
そのため指先には吸盤がついているのが特徴で、木から滑り落ちないような形態をしています。
ここ陶陽庭で卵が確認できるようになったのは、去年の五月からです。
そして今年も、こうして戻ってきてくれました。
樹上に佇んでいる親蛙の姿も目撃したのですが、あいにくカメラを持っていない時で
まだ写真に収められていません。
池の上に張り出している枝の上で、約三時間ほどかけて産卵は行われます。
この樹上で卵が孵化し、産卵後約十日ほどでおたまじゃくしとなり、
池へとポトン、ポトンと落ちていきます。
泡のかたまりは五個ほどあったので、この池には、数千匹ほどのおたまじゃくしが
いたでしょうか。
手が出て足が出るのを陶陽庭へ行く度に、いつかいつかと観察していました。
そして昨日ついに手足の出た子蛙を発見しました。
しっぽはまだ長いままですが、呼吸も既に、えら呼吸から肺呼吸へと変わっているはずです。
これから陸に上がり数日は、何も食べず木の葉の上や草むらで、
じっとうずくまっているようですが、やがて山へと移っていきます。
食べ物はアオガエルと同じくアブやハエ、蚊、蛾などの小さな昆虫で、
天敵は蛇や鳥のようです。
あと数日でこの池からは旅立ちますが、陶陽庭とその周辺の森で暮らしていくのでしょう。
とはいえ、周辺はもともとあった落葉広葉樹林が伐採され
植林された杉などの針葉樹林がほとんどです。
よりよい環境を求めて、コナラ、ソロ、モミジの樹冠の下に流れる小川が池へと注ぐ
この陶陽庭へ辿り着いたのかもしれません。
人間様の評価ももちろんありがたいのですが、嘘偽りのない自然界の中でも
とても繊細なモリアオガエル君に、認められたことがこの上なく嬉しい日々です。
モリアオガエルは基本的には、二〜三年後生まれ育ったふるさとの池に戻ってくる習性があります。
その時には、モリアオガエルの視点でも空間がとても心地良いものであるようにし、
親となって戻ってきたモリアオガエルを迎えたいと思います。(T)