藤倉造園設計事務所

木漏れ日の中で

久しぶりに浅間山に行きました。

雑木林の中で空を見上げると、きらきらとやさしい木漏れ日の中、

今にも咲き出しそうな蕾みがエゴの木を覆っています。

この花は浅間山の名物、ムサシノキスゲ。自生地は現在、浅間山だけだそうです。

ニッコウキスゲの変種で低所の乾地におりた型です。

ユリ科のワスレグサ属に分類される多年草で、丘陵地の林床や草地に生育し、

花は淡橙黄色で素敵な芳香があり楽しめます。

今年は例年より寒かったせいか、花の状態があまり良くないようですが、

雑木林の林床が、色彩豊かに染まっています。


この花はキンラン。

ギンランやアマドコロ、キツネアザミやアヤメなども可憐に花を咲かせています。

 

話は変わりますが、先日雑誌に掲載するための庭の撮影を行いました。

新緑も一段落。みどりにボリュームが出始めたタイミングで撮影が行なわれました。

雲の動きを読みながら撮影ポイントを決め、光を上手に捉えながらカメラに収めていきます。

自分が考えてもいないようなカットで撮られていくのは新鮮で、構図の勉強にもなります。

天候にも恵まれ、きらきらとした木漏れ日の良い写真が撮れたのではないかと期待しています。

10月中旬に発売予定の雑木の本。

住環境として、家と庭の関係性や空間的な要素、メンテナンスや病害虫なども本格的に

解説され、充実した内容で構成が進められています。

楽しんでいただけるような一冊になると思いますので、

是非、手に取って読んでいただきたいです。

 

撮影を快く受けてくださいました庭主様、

心より感謝いたします。

良い季節に仕事以外で大事にされている庭を見る事ができ感無量でした。

ありがとうございました。

 

 

国際バラとガーデニングショウ

独立をして間もなく大きな壁に直面しました。

まだ今のようにパソコンの環境も良くなく、自分の仕事を知ってもらう術がありません。

なかなかうまく仕事に繋がらない。

そんなとき、たまたま立ち寄った造園屋さんにコンテストのチラシを頂きました。

『なんとかしなくては。』現状を超えていく大きなチャンスと思い応募したガーデンショウ。

あれから10年。久しぶりに協力者として作業をする機会をいただきました。

ワンステップ上に行く為に、自分を追い込み熱く語る想いに打たれ、少しでも力になれたらと思い。

ドーム内は植物や土の匂いであふれ、会場も活気にあふれています。

どの作品も情熱とアイデアに満ちあふれ、毎年毎年よく考えつくなと感心させられます。

彩り鮮やかな作品が目立つ中、私たちの作品は、re・birth(リ・バース)。

古代遺跡が風化して崩れ落ち、植物の力で再生していく生命の力強さを表現した作品です。

柱の文様はそれぞれ、水、地、火、風、太陽、月を表し、自然の中でいろいろなものが

合わさって命が生まれてくるという意味を込めています。

2階のスラブの上から砂が落ちてくると言う演出もあり、見る事が出来たらかなり運が良い方です。

写真ですと、うまく伝わりませんが、スケール感が大きく迫力のある作品です。

今週の20日、日曜日まで開催していますので是非ご覧ください。(16日、水曜日は休み)

 

中島くん、お疲れさまでした。納得のいくものが出来てよかったね。

ホッとしています。

賞おめでとう!!!

よい経験をさせていただき感謝いたします。ありがとうございました。

これからも宜しくおねがいしますね!!

 

 

 

立夏

立夏を迎え、待ちに待った春も名残を惜しみつつ送らなければならない時節となりました。

ハクウンボクの花も咲き始め、

春を惜しんでいる暇もなく、次々と、このナニワイバラや初夏の花が弾けます。

月も改まり、カレンダーをめくると今月はミズバショウとハンノキの湿原。

この影絵を見ていたら、どうしても湿原へと旅立ちたくなりました。

そこへ向かう前に、伝統的な構法による木のたてものつくりを、

建主さんや有志の方々が参加して行っている

きらくなたてものやさんの現場へと寄らせていただき、

土壁にするためにこしらえている竹小舞掻きのお手伝いをちょっとだけさせていただきました。

竹刈りや竹割り、柿渋塗り、小舞掻き、土壁の荒塗りなどは、

現代における「結」のような形でされていて、

何回か参加させていただいていますが、毎回、集まる方々の意識の高さと

現場に充満している良い波動、そして現場にいる子ども達の存在に、

温かい気持ちにさせていただけます。

そして、明くる朝、仙石原の湿原へ到着。

ミズバショウは、既に花は終わり葉っぱはグーンと大きくなって、

カレンダーのような風景とは違いましたが、気持ちの良いことこの上ありません。

これはリシリヒナゲシというようですが、数々の山野草が今を盛りと咲き誇っています。

奥に見えるのは、先日の安藤邦廣さん講演会でも登場した仙石原のすすき野です。

毎春恒例の野焼きを終え今は、新たに芽吹いた命が成長しつつあるところです。

雨も降ったり止んだりですが、湿原は少し霧がかかっているくらいの方が気分が出ます。

芦ノ湖も一時は穏やかでしたが、

天気予報通りの雷雨が来ると大荒れ、遊覧船も欠航していました。

そんな悪天候を間一髪逃れ、雷雨に洗われた清々しい空気の中、

古からしっかりと佇む箱根古道の石畳に、新緑の木々からポツリポツリと

水滴が落ちてきます。

そこを踏みしめ歩を進めていくと、

何代も受け継がれてきている「甘酒茶屋」へと辿りつきます。

甘酒も、こんにゃくのおでんもとてもとても美味しく、極上の一時を過ごせます。

箱根の旅の最後は、ここと決めています。

この茅葺きの茶屋の内部は、しっかりと木で組まれた梁が、いぶされて美しく黒光りして、

手作りで無添加の食べ物、あたたかくもてなしてくださるお店の方、

そんな茶屋に惹き付けられてくる旅人で、良い空気に満たされていました。

立夏を過ぎ、これから今年も暑い暑い夏がやってくるのでしょうか。

その前にいただいた暫しの休息期間、新緑の木々、きらきらと光る湿原・湖面、

愛着を持って丹念に育まれる本来の家、そして感受性豊かな方々との出会いから、

心の泉は満々と湛えられ、ちょっぴり自分の波動も高まった気がしました。(T)