渋川の現場の前を通る列車が登山客や湯治客を運ぶその行く先には、
谷川岳や草津、万座の温泉などがあり、山好きにはその行く先を見るだけでも
心躍るものがあります。
渋川までは、関東平野が広がり景色も退屈なのですが、そこを過ぎると一気に山中へ。
山間の田んぼが空の雲を映し、その間を列車が蛇行し徐々に高度を上げていきます。
渋川で谷川岳へ向かう列車とは袂を分かち、
吾妻線で草津方面へ向かい、
川原湯温泉駅で下車しました。
ここは八ツ場ダムの計画が進行しているところで、
こじんまりした温泉と豊かな山林の間を削って流れる吾妻渓谷があります。
ダム計画で推進派と反対派で村は分裂、
そしてやがてダム底へと沈んでしまうかもしれない悲しさから、
ここは行きたい場所ではなく、でも一度行かなくては行けない場所
という思いが以前からありました。
首都圏の水道用水は減少の一途をたどっており、今はますます水あまりの時代へと入っています。
また利根川の治水にも役立たないことがわかっているこのダムは建設すると災害誘発の
危険性もあります。そして、節電が叫ばれる中「電力不足だからダムは必要」
という誤解もありますが、八ツ場ダムは既存の水力発電量を大幅に減少させるダム事業です。
この時代遅れのダムに投入される公金は9000億円と言われています。
現政権はその最も輝かしい公約であった「コンクリートから人へ」という
スローガンをかなぐり捨ててこの明らかに無駄な事業に再び大金を投じています。
震災後、世の中は少し変わるかと思いましたが、
政策は高速道路や新幹線、港湾の整備、原発の安全確保など
さらなる公共事業の大幅増を打ち出しています。
原発もダムも施主は私たち首都圏の住民です。
私たちの「無関心という名の加担」が一番の原因かもしれません。
そんな、もどかしい思いをも吾妻渓谷のどこまでも美しい森と川は、
やさしく包み込んでくれました。
しかし、ダム関連工事の断片であるコンクリートが目に入る度に、
心はどうしようもないどん底に突き落とされます。
ここにも、
ここにも、、、
若山牧水は「静かなる旅をゆきつつ」の中で、
「私はどうかこの渓谷の林がいつまでもいつまでも
この侘びと深みを湛へて永久に茂っていてくれることを
心から祈るものである。
どうか私と同じ心でこのそう広大でもない森林のために
永久の愛護者となってほしいものである。」と綴っています。
この八ツ場ダムについては、
加藤登紀子さんも世話人を務める「八ツ場あしたの会」のHPで詳しいことがわかります。
この風景の奥にあるものから何を感じるでしょうか。
政治がどうこうではなく、私たち一人一人が変化そのものにならないといけないのかもしれません。
この吾妻側の下流、渋川での庭作りが明日完成しますが、
そこでは、庭にビニールを敷きコンクリートを流し込んで作る昭和の造園手法とは違う、
粘土を突き固めて池底を作り、そこに水をためる空間作りをしました。
その様子は次のブログに書かせていただきます。(T)