これは渋川の現場で、コンクリートを使わずに水をため庭に沢を出現させるべく
沢底を突き固めているところです。
ここでは、埼玉県の児玉でとれた粘土で底を作っているので、
防水シートとコンクリートを使ってやるよりも、手間がかかります。
それでも、多少水が洩っても、庭に未来の産業廃棄物を残さず、
呼吸のできる地盤を作ることで多様な生物達にも住みやすい地となります。
同時に、この同じ児玉の土を使って土塀も作ります。
これは土塀の粘土のつなぎとするために藁を細かく切っているところです。
その土塀の骨組みと竹小舞をまず作ります。
土塀は三年以上前から試みたい庭の構造物でしたが、
家との調和を考えるとなかなかそのような空間はなく、今回念願の施工する機会をいただきました。
しかし準備は万全で、何度か休みの日に、木組みと土壁の家を作る深田真工房さんや
きらくなたてものやさんの現場へうかがい色々と教わってきました。
この竹小舞もそれを思い出しながら編んでみました。
沢底も土壁も同じ粘土なので、沢底で粘土と藁を裸足になって練り合わせ、
それをそのまま土壁へ、残った粘土は沢底の仕上げとします。
この写真は富山の専門学校からの研修生・A君が撮ってくれました。
とても芯のしっかりしている好青年です。
水につけて醗酵させた藁は、ほのかに良い臭いを放っていますが、
それを足で踏みつけて粘土とよく混ぜます。
そして竹小舞の隙間を埋めるようにしっかりと押し込んでいきます。
有害な化学物質の入っていない自然素材だからこそ、裸足で捏ね、素手で壁に塗り付けて
このような健康的な仕事ができ、健康的な庭を作ることができます。
最後は鏝でしっかりと仕上げます。
混ざり物のない粘土なので、乾燥するにつれ、もちろん割れてきます。
その割れを楽しむのも良し、上から仕上げ塗りをするのも良しと考えています。
自然素材だからこその、時と共に増す風合い、
それがどのような移ろいを見せるのか楽しみでなりません。
そして手前の沢底には、青梅の採石場から持ってきた石を入れ沢っぽさを出します。
粘土のままだとどうしても水が濁ってしまうことに加え、上流のゴツゴツ感を出すためには、
こうした仕上げになります。
苦労して突き固めた粘土は見えなくなってしまいますが、
こうした隠れてしまう目に見えぬものにこそ大切なものが含まれているのかもしれません。
この呼吸のできる沢に、様々な生物が住みついてくれて、そんな空間で庭主様一家が、
心地良い時間を共有してくれることを願っています。
このような機会をいただきどうもありがとうございました。(T)