藤倉造園設計事務所

紫陽花三昧


太陽がいちばん長く出ている夏至を迎えています。

今週は梅雨空で、蒸し暑い日や肌寒い日が交互に続きました。

季節の変わり目で、体調調節が難しい時期でもあります。

じめじめとした煩わしい梅雨ですが、植物にとっては雨の恵みを思う存分吸収でき、

潤いを得て活気づく時期でもあります。


雨は木々や草花を美しく見せてくれます。

じめじめした気分を、気分よく変換してくれる紫陽花。

各地であじさいが見頃になっています。


私が訪れたのは高幡不動尊金剛寺。

300種、7500株の紫陽花がモミジを中心とした雑木山に植えられています。

山紫陽花や西洋紫陽花が中心に色鮮やかに咲き誇っています。

私たちが庭づくりで植える紫陽花は、一、二種類ぐらい。

色々な植物を植えたいと思うので、数もそんなには植えられません。


決して良い条件ではない、北斜面の山に一面に紫陽花が咲いているのを目の当たりにすると、

もっと庭でも紫陽花をいっぱい植えたくなってきました。

庭であじさいが一面に咲き誇っているのを想像するとワクワクしてきます。

あじさいの存在を改めて見直して、もっと活用していきたいと思いました。

最近人気のアナベルやカシワバアジサイなども植えられています。


多くの人々が紫陽花を眺めながら、梅雨のまとわりつく煩わしさから良い気分に変換していきます。

私たちの求める空間でも、さまざまな気候や季節に対応でき、

気持ちが休まる空間にしていかねばなりません。

季節のかたみ

今日は二十四節気でいうと芒種。

咲き始めたあじさいの花が雨期の間近を告げています。

花が咲いていない時は気付かないのですが、この季節になると至る所で

センダンが存在感を示しています。

フェンスによじ上って花を接写してみました。

香りもとても良く、「栴檀(センダン)は双葉より芳し」とはよく言ったものだなあと思ったら、

この栴檀は実は白檀(ビャクダン)を指すのだと後で知りました。

庭では嫌われ者のドクダミも今が盛りと謳歌しています。

化学農薬を使わない防虫対策として、木酢液に唐辛子とにんにく、

そしてこのドクダミを漬込んだものを作っていて、

お客様の庭でも予防のため、そして発生してしまった虫をころりとは殺しませんが、

徐々に弱らせるため散布させていただいています。

上の写真は、木々と空の雲を映す水面に、笹舟を作ってそこにドクダミを一輪乗せて

浮かべてみたものです。

道すがら八重のものも見かけました。

園路脇に並んでいた義木には、それぞれに我が陣地とばかりにカナヘビが鎮座し、

旺盛に活動している姿が、こういう季節になったのだなあと移ろいを感じます。

道草をしながら時に身を屈めてみると、ここにもそこにも小さな草花が。

素通りせず、こんな藍色ニワゼキショウのような小さな姿もすくいとっていけるよう

感性を常に瑞々しく保っていなくてはと改めて思います。

渋川の現場では、アマガエルくらいの大きさで灰色の蛙が散歩しています。

何カエルというのか調べてみようと思っていますが、

この蛙を植えたばかりのオオカメノキ(ムシカリ)の木に放してみました。

居心地はどうですか?(T)

国際バラとガーデニングショウ

独立をして間もなく大きな壁に直面しました。

まだ今のようにパソコンの環境も良くなく、自分の仕事を知ってもらう術がありません。

なかなかうまく仕事に繋がらない。

そんなとき、たまたま立ち寄った造園屋さんにコンテストのチラシを頂きました。

『なんとかしなくては。』現状を超えていく大きなチャンスと思い応募したガーデンショウ。

あれから10年。久しぶりに協力者として作業をする機会をいただきました。

ワンステップ上に行く為に、自分を追い込み熱く語る想いに打たれ、少しでも力になれたらと思い。

ドーム内は植物や土の匂いであふれ、会場も活気にあふれています。

どの作品も情熱とアイデアに満ちあふれ、毎年毎年よく考えつくなと感心させられます。

彩り鮮やかな作品が目立つ中、私たちの作品は、re・birth(リ・バース)。

古代遺跡が風化して崩れ落ち、植物の力で再生していく生命の力強さを表現した作品です。

柱の文様はそれぞれ、水、地、火、風、太陽、月を表し、自然の中でいろいろなものが

合わさって命が生まれてくるという意味を込めています。

2階のスラブの上から砂が落ちてくると言う演出もあり、見る事が出来たらかなり運が良い方です。

写真ですと、うまく伝わりませんが、スケール感が大きく迫力のある作品です。

今週の20日、日曜日まで開催していますので是非ご覧ください。(16日、水曜日は休み)

 

中島くん、お疲れさまでした。納得のいくものが出来てよかったね。

ホッとしています。

賞おめでとう!!!

よい経験をさせていただき感謝いたします。ありがとうございました。

これからも宜しくおねがいしますね!!

 

 

 

夜桜

桜が見頃の時期となりました。

今年は遅い遅いと開花を待ち望んでいましたが、

入学式の時期に桜が満開になるのが本来の開花時期で、

この何年かが早すぎた開花をしていたように感じます。

穏やかな陽射しのもと、都内でもようやく満開に近い桜が見られるようになりました。

日中は、現場作業や図面書きに追われ、ゆっくりと桜を見ることが出来ませんでしたが、

夜桜のライトアップをしている自由学園.明日館を訪れました。

照明に照らされた桜は、とても美しい姿で迎えてくれました。

格調高い雰囲気に感動を憶えるこの明日館は、

近代建築の巨匠、フランク.ロイド.ライトとその弟子の遠藤新の設計です。

オーナーである羽仁夫婦の教育理念に深く共感し、設計を快諾したと言われています。

外観は『プレーリースタイル』で屋根は低く、建物は水平線を強調した平屋づくりですが、

中央棟には吹き抜けのホールがあり、大きなガラスが最上部まで設けられた

明るく開放的なデザインになっています。

開放期間中、中央棟の天井にも桜の照明がやさしく映し出されていました。

ホールではミニコンサートも開かれていました。

ゆっくりと心地よい音楽に浸りながら時間が流れていきます。


中央棟ホール、食堂への玄関廊下。廊下の両側には下駄箱、

傘立てやベンチが作り付けとなっています。

照明や収納棚、窓枠や椅子などすべてをライトがデザインしたもの。

遊び心にあふれ、幾何学的な中にもやさしさが感じられます。

ライト設計の帝国ホテルの椅子と似て、六角形を基調とした椅子。

ラワン材を使用し、背もたれは六角型で革張りのシート張られています。

可愛らしい椅子の座り心地は抜群です。

ライトが日本で出会った大谷石。

内部空間と外部空間を大谷石で統一してひとつにつないでいます。

調和を大切に、連なって流動している様子を演出し、

複雑なデザインの調度品が点在している空間は、

芸術性の高さ、全体構成、細部に至るまで、

ライトが悩み、楽しみながら設計をしたことを感じさせます。

建物は使いながら文化価値を保存する『動態保存』のモデルとして運営されています。

守っていくことは様々な障害や苦労があることと思いますが

いつまでも守り継いで未来に伝えていただきたいです。

 

文化財を身近に感じ、今を生きている美しいライトの遺産を肌で感じ、

夜桜とともに幸せなひと時を過ごすことができました。

 

貴重なひと時を与えてくださいました関係者の皆様、どうもありがとうございました。(F)

 

 

 

 

 

 

 

春眠暁を覚えず

「春の眠りはここちよく、いつ夜が明けたか気がつかない。」

「あちらでもこちらでも、鳥のさえずりが聞こえる。」

「昨夜は雨まじりの風が吹いていた。」

「花がいったいどれくらい散っただろうか。」

 

二日続いた雨も上がり、一段と温かさをまして、

こんな孟浩然の「春暁」の漢詩がぴったりの日和となりました。

春爛漫の小石川植物園からは、旧東京医学館本館がきらきらと望めます。

こちらは東京国立博物館本館です。

ジョサイア・コンドル設計の旧館は、関東大震災で惜しくも倒壊してしまい、

その後に建てられたこの建物は、帝冠様式と呼ばれ、洋風のコンクリート造建築物に

和風の塔や破風を配されています。

今は、その裏の庭園もちょうど解放されていて、

池の周りに配された五棟の茶室も見ることができます。

寛永寺本坊跡に作られたこの博物館は、本館、表慶館、法隆寺宝物館、平成館からなり、

中央の広場には、こんな立派なユリノキが伸び伸びと枝を思う存分空へと広げています。

この平成館で、いま行われているのが、

「ボストン美術館 日本美術の至宝 特別展」。

楽しみにしていました。

博物館や美術館には、それぞれキュレーターや学芸員の好みや傾向があり、

権威的な美術館でありながら、何度行っても心に響かないところもあれば、

ここのように、「阿修羅展」「細川家の至宝展」「空海と密教美術展」など

行く度に期待以上の感動と満足感を得られるところもあって、

自分の美意識や価値観から共感できる美術館は人それぞれです。

今回の一番の目玉は、奇才と呼ばれる曾我蕭白の「雲龍図」。

自由奔放で躍動感があって、力強くドラマチックな水墨画には、

ものすごいエネルギーが迸っていました。

他に、狩野永納の「四季花鳥図屏風」では、四季折々の風景の中で、

桜から紅葉までの変遷に、様々な鳥たちが遊び、

林床にも、何とも言えない濃いブルーの水辺の脇で、こと細かく四季の草花が描かれ、

植木に携わる職業を選んだ心をくすぐります。

念願の伊藤若冲の絵にも思いがけず出会え、日本の美の奥深さを再認識すると共に、

明治維新後の欧米化に始まり、戦後より顕著になって今まだ続く、

グローバリゼーションの波の中で失い続けているものの大きさを感じます。

落葉樹の中でも芽吹きの早い柳の新緑は、

なんともいえず美しく、その影を法隆寺宝物館前の水面に落としていました。(T)

春のかおり

世界トップレベルの野菜を揃え、色鮮やかな野菜が並んでいるレストラン農家の台所。

ワクワクする店内には選挙ポスターが飾られており、

こだわりの野菜たちを作った生産者たちの顔が写されています。

農薬や化学肥料に頼らない、持続可能な農業を実践され丹精込めて野菜を育てています。

健康的な土づくりをすればしっかりと根を張り、病気や害虫にも強い丈夫な野菜が育ちます。

安心.安全は当たり前で、その先の美味しさ.美しさも追求されている精鋭達。

すぐには結果のでない農業。地道に土づくりから始め、長年の経験と自分の信じた方向へ向かって

毎年試行錯誤しながら改良して、より良い品質のものへ手掛けていきます。

私たちの仕事と共通する事が多い農業は、技術だけではなく精神的な心構えも含め

いろいろな事を学ぶ事ができ参考になります。

この季節になるとポスターにも写っている中村安幸さんの畑を訪ねます。

お目当ては『東京うど』。

始まりは江戸時代といわれ、東京を代表する伝統野菜をいただきに伺います。

室や半地下で陽の光に当てる事なく育ったウドは、色が白く香りが良いのが特徴です。

暖かく一定な温度に保たれた室の中で、幻想的な姿でうどが育っています。

室の中は春の香りでいっぱいです。

陽に当てていない分、山うどに比べてアクが少なくシャキッとした歯ざわりが楽しめます。

うどを食べないと春が来ないようで、毎年一足早い春の味覚を楽しんでいただいています。

食べ方は工夫しだいで豊富にあるそうです。

私はシンプルに天ぷらやきんぴらでいただくのが好きですが、

はたして今年はどうやって食べるのかな?  楽しみです!!

いつも献身的に畑と向き合い、手間を惜しまず情熱と愛情を野菜に注いでいる中村さん。

『楽な仕事ではないから面白いね〜』という言葉の裏にはいくつもの苦労があると思います。

その苦労を乗り越え愛情たっぷりの野菜を収穫して消費者に、美味しい!

と喜んでもらえた時に苦労が報われます。

すべてはその瞬間の為に。

 

志は同じなのですが、私にはまだまだ修業がたりません。

見習っていく事がたくさんあります。

すぐに結果の出ない仕事だからこそ、今できる事を精一杯取り組み実行していく。

先を見据えて行動していかないといけないと気付かされます。

 

素敵な笑顔で美味しく.美しい野菜をつくり続けている中村さん、

貴重な野菜たちをいつもありがとうございます。

大事に春の香りを味わっていただきたいと思います。(F)

 

 

 

 

先を見据えて

毎年の家族行事となっている明治神宮の初詣に今年も訪れました。

神宮苑内に入ると心が浄化され、穏やかに、清らかになるように感じます。

明治神宮は、『永遠の森』を目指し大正4年から造営工事が始まり、

全国から植樹する木を奉納したいと献木が集まりました。

当時、365種でしたが、東京の気候風土、生態系的ににそぐわない樹種もあり

現在では246種、17万本もの木々が豊かに生い茂っています。

 

わずか半世紀で自然の状態にもどったこの森は、何を植えたら立派に育つか、

100年後の自然の状態を見据えて当時の学者たちが考えました。

伊勢神宮や日光東照宮にある、杉並木のような雄大で荘厳なものを望んでいましたが、

杉が都会に適さないこと、東京は公害が進み苑内の大木や老木が次々と枯れていったことにより、

実現しませんでした。

そのため、100年先を見据えた神宮は、照葉樹でなければ育たないことを

当時の首相であった大隈重信らに説明し、

主にシイ、カシ、クスなどの照葉樹を植えることで決定したのです。

 

人の手を離れても美しさを保ち続け、生き生きと豊かに茂るこの森から

学ぶことは山ほどあります。

適度に林床に光りが差し込み、良い状態で生態系が保たれ、

多くの生物が共存している都会のオアシスを、先人たちが見据えて成し遂げてきたました。

私たちも先を見据えて豊かで美しく、

多くの生物が共存できる空間づくりに努力をしていかねばなりません。

 

『永遠の森』が増え、人と自然が上手に心豊かに共存できる社会でありたいと願うばかりです。 (F)

 

 

 

 

雑木林からの贈り物

先日訪れた町田の武相荘では、玄関前の壷にイイギリの枝が投げ入れられていました。

その赤い実からナンテンギリともいわれるこの木の風情がとても季節感があって、

雰囲気が良かったので、我が家でもやってみようと思い私も雑木林から一枝失敬してきました。

しかし、狭い家の中には、そんな大きな壷もなく大きな枝を入れるスペースもなく

思案に暮れていました。

数日後、仕事から帰ると、小さなスペースに収まるように、

フジの蔓にゴールドクレストの葉をさしたリースの中で、

真っ赤なイイギリの実は、輝ける場所を見つけ満足気でした。

こちらも赤い実ですが、同じく雑木林からいただいてきたサンキライ(山帰来)の実です。

楽しい植物の宝庫・雑木林でとってきたものを季節感を出して飾って、

クリスマスソングの流れる家に帰ってくると、とてもうきうきした気分になります。

指折り数えていた聖夜も、もう片手で十分なくらい近づいてきました。

サンタさんは、今年はどんな希望をプレゼントしてくれるのでしょうか。(T)

モミの木

11月中は暖かかったせいか、あまり眼に入らなかった街路樹や公園の木々達が、

師走に入り空気の冷たい日々が続いているため、

最後のお化粧を精一杯して色鮮やかに私達の眼を楽しませてくれています。

葉が落ちるということは、来年の芽の準備がしっかりできたことにより、

来芽によって葉が押し出されることのようです。

冷たい冬を乗り切り来年に向けて着実に動き始めています。

師走に入る前あたりから、娘達が「モミの木、モミの木」と騒ぎだします。

「本物のモミの木に飾りたい」と娘が幼稚園の頃から始めたクリスマスツリーも

今年で10年目を向かえます。

10年前は60㎝ぐらいの苗木であったモミの木も、今では180㎝ぐらいでしょうか。

オーナメントに隠れて存在の薄かったモミの木もかなり貫禄がついてきました。

オーナメントは手作りのもので、電飾などはありませんが、窓越しのツリーを眺めていると

なんだかあったかい気持ちに包まれます。

ちょっと前まで大きな靴下をぶら下げて願い事を書いた手紙を添えていた姿を

見られなくなってしまった寂しさはありますが、

クリスマスツリーによって思い起こすことが出来ます。

このモミの木は普段、上野原市の陶陽庭に植えてあります。

10年の歳月を経ると根鉢も大きくなり植木鉢に入らなくなってきたので、

今年で掘り起こすのは最後にして、今後は陶陽庭でのびのびと大きくしていこうと思っています。

根付いた頃に掘り起こしてしまうので、少しかわいそうな気持ちもありましたので。。。

私達のクリスマスの想い出はこのモミの木と共にあり、感謝の気持ちで一杯です。ありがとう。(F)