藤倉造園設計事務所

練馬の庭 始動

 

練馬区関町の庭がスタート致しました。

3年前に家を二世帯住宅に建て替えた、庭主様とお母様の部屋を繋ぐ中庭です。

プライベートな空間を居心地よくして、家族団らんのひと時を

緑豊かな空間で過ごせる庭にしていく予定です。


今回の素材は大谷石、レンガ、枕木、、御影石とすべてアンティークの材料でまとめます。

古材の質感は味わい深く、その素材自体に力があります。

一つひとつの個性が強いためバランスを取るのに苦労しますが、そこがおもしろい所のひとつです。

決して広くはないスペースですが、広さを感じる事ができるよう無駄なく、

与えられた空間を最大限有効活用していきます。

日照時間は今時分で3、4時間ぐらい。

お昼を過ぎると陽は差し込む事はなく、比較的暗い印象を受けます。

その印象を庭として上手に活用していき、雰囲気をもり立て、全体を馴染ませていきます。

庭から会話が弾み、ご家族の笑顔があふれるような雰囲気づくりの始まりです。(F)

 

未来からの「借りもの」

一日のうちで、一番明かりが美しいのは、

夕刻から夜に移行していく時間帯と言われています。

先日完成した吉祥寺の庭では、センサーが反応すると防犯用のライトが点きます。

これは、写真を撮るためにそのライトで草屋根を照らしているのですが、

お月見の時などに草屋根の上のすすきにフォーカスしてみるのも面白いかもしれません。

日本人は、かつて提灯や行灯など暖かい柔らかい明かりの中で暮らしていました。

庭主様は、家の中でも部屋全体を優しい明かりが包み込む

ルイス・ポールセンの間接照明を選ばれているため、

庭でも陰影のある「ほのあかり」を感じられるよう

光を当てる場所を決めるのには時間をかけました。

こだわったことといえば屋根の勾配もあります。

この自転車小屋には道路から草屋根がよく見えるようなという

ポワーンとしたビジョンこそあれ設計図はありませんでした。

現場の状況やハプニングに反応しながら、その場で決めていきます。

そして、この土間にも偶然から産まれた微妙な風合いがあります。

足で踏みしめた後、地鏝(じごて)を使って手作業で一日中叩き続けて仕上げているのですが、

途中、業者さんが残してくれた黒土の足跡を一緒に叩き込むことで、

味のあるグラデーションが生じました。

設計図というものの便利さや重要性を踏まえながらも、

現場で産まれる偶然性に寄り添ってものができていくことの面白さを感じられた現場です。

日本最古の木造建築といわれる法隆寺にも設計図はなかったと言われています。

そんな法隆寺の宮大工である西岡常一さんのドキュメンタリー映画『鬼に訊け』が、

今上映されており、雨の本日やっと見ることができました。

西岡さんは、大工になる前「土を知る」ために、農学校に行かされたそうです。

自然は土を育み、土は木を育てる、その教えの深淵さに身震いし、

遠回りに思える農作業には宮大工に伝わる全ての神髄が含まれていると悟ったそうです。

「法隆寺の棟梁いうても毎日仕事があるわけやない。仕事のないときは農業をやって

食っていたんです。田んぼと畑があればなんとか食っていけます。

ガツガツと金のために仕事せんでもええわけですから」という言葉もパンフレットにありました。

今でこそ、半農半Xと特別のことのようにいわれますが、

かつては、こういうことが当たり前だったようです。

映画を見た後に向かったサティシュ・クマールさんの講演会でも

同じようなメッセージを受け取りました。

西暦ではキリストの生誕を境として紀元前と紀元後と表されますが、

3・11前と3・11後でもとても大きな変化があります。

二年前に聞いた講演会の時からサティシュ・クマールさんは言われていたのですが、

これからの社会は、「soil(土)、soul(心)、society(社会)」だそうです。

「国破れて山河あり」という言葉があるように、戦後は豊かな「土」があったから復興できた。

「水」「空気」「土」など「自然」と切り離されては、人は生きていけませんが、

原発はなくても生きていけます。

石油やウランは日本にはなく有料で戦争の原因でもありますが、

「水」「空気」「土」は日本では特に豊富でどこにでもあって、しかもほぼ無料です。

そして不必要な労働はもうやめて、必要な価値ある仕事だけしようというメッセージも

西岡さんと共通するものでした。

また、植木屋として興味深いこんな逸話も。

仏教を広めたことで知られるインドのアショカ王のお話。

それは全国民に5本の木を植えることを義務づけたという決まり。

1本は食べものになるマンゴーやりんごなどの果樹、

1本はシッソノキなど材木となる木、

1本はニームのような薬効のある木、

1本は椿やジャスミンなど花を咲かせる木、

最後の1本は燃料となる木です。

そして、これらの木は自分の代で伐ってはいけなくて未来の世代のために残します。

地球は「自分たちのもの」ではなく、未来からの「借りもの」であるから、

地球を借りた時より、よい状態にして返すことが責任だという考えです。

植木屋の修行をしているものとして、それ以前に人間としてどう生きるべきか、

深い深いメッセージを受け取った貴重な雨の休日でした。(T)

ぐるぐると

昨年の秋に手掛けさせていただいた武蔵野市吉祥寺の庭の二期工事が終了しました。

今回の仕事は、家族4人分の自転車の置ける駐輪場と裏庭の庭づくり。

二期工事は嬉しいものです。前回の庭の雰囲気と繋げ馴染ます事ができ、敷地の外部空間を

トータル的に庭として無駄なく活かす事を目的として住環境を整えることができます。

最終日、作業が終わったのは西からの日差しが優しい時間でした。

大きな窓と大きな土壁風の壁を持つ外観に木漏れ日が映ります。

季節や時間によって織りなす影も、大きな庭の演出の一部であり見せ所のようです。

ウッドフェンスはリビングからの目隠しの要素で少し高めに設定をしていますが、

角度に変化を付け高低差を付ける事により圧迫感を軽減させ馴染ませています。

植栽もフェンスの前後に配置する事で樹木が重なり合い、フェンスだけでは隠しきれない所を

柔らかく、さり気なく目隠しの役目を補ってくれています。

建築と色を統一する事で違和感なく感じられました。

門の扉を開け玄関に導くアプローチ。

緑のトンネルを抜けて玄関に向かいます。

リビング前の主庭はコナラを中心に空間を広く取り、

ゆったりとくつろげるスペースにしてあります。

そこを抜けると、

山道を思わせる園路と続きます。

写真にはうまく写らないのですが、園路の高低差はかなりあります。

学校や幼稚園から帰ってきた二人の子供と友達達が何周も庭を駆け巡るのですが、

この起伏のある小道を、「ジェットコースターみたいなんだよ」と

息を弾ませながら話してくれました。

そして、水がたまったりする箇所も意図的につくってあります。

わずかな園路ですが楽しいものです。

山道の園路を抜けると裏庭に出ます。

物置のある裏庭はコンポストを中心に構成してあります。

コンポストは廃材でつくった簡単なものですが、

この空間にはラフな感じのものの方があったと思っています。

庭の中は落葉樹の樹木でほぼ構成されているので、

落ち葉を集めていただきコンポストで土に還し肥料として庭に戻していく循環型の裏庭です。

草屋根はやってみたかった仕事のひとつでした。

今回は駐輪場でしたが、物置や屋根付きのテラスなど大きく展開できるアイテムになります。

駐車場奥に設けた駐輪場の骨組みは極力シンプルにしてあります。

屋根の勾配角度の決定に少し悩みましたが、良い角度でうまく収まりました。

屋根は野芝をベースにイチハツやアヤメ、ススキなどを織り交ぜています。

メンテナンスは年一回、年末に刈り込んで整える程度。

将来的には野芝がなくなり雑草で覆われると思いますが、鳥に運ばれてきた種などから

植物が育ち馴染んでくれると面白くなります。

照明もセレクトして取り付けました。現在は40ワットのシャンデリア球が付いています。

あまり明るすぎる電球ではなく、ほのかに明るい程度の方が雰囲気がまします。

屋根とフェンスとの間から見える隣地の竹林も、眼に優しく絵画のように写ります。

作業中から通りがかる方々から声をかけていただきました。

『あの馬小屋みたいな建物はなぁに?』

意識の中になかった馬小屋と言われ、嬉しさがだんだんと込み上げてきました。

 

子供たちが、学校から帰ってきて、家の周りをぐるぐる何周も駆け巡るという

設計の時点で狙っていた事が、実際に行なわれると本当に嬉しくなります。

決して庭の面積としては広くはありません。しかし敷地を無駄なく統一していけば、

かなり庭として有効に生まれ変わり、家と庭の相乗効果で心地の良い暮らしが得られると思います。

 

純粋に庭で子供達が夢中になれる空間になったかどうかは、子供達にしかわかりませんが、

庭を通してさまざまな思い出が刻まれる事を願っています。

お友達がきたり、もう少し大人になっても、庭をぐるぐると駆け巡ってくれると嬉しいですね。

そして、ここでは雑木たちが落とした葉もコンポストで醗酵させ、

毎年ぐるぐると堆肥として庭に還元して循環させることができます。

 

楽しく熱中して打ち込む事ができました。

このような機会を与えていただき、心より感謝いたします。

ありがとうございました。(F)

 

 

 

 

 

春浅し

身の引き締まるような寒さの朝から仕事をしながら、

だんだんとポカポカしてくるのを感じていると、

お天道様のありがたさが身に沁みます。

ジャンパーもいらなくなった昼休み、

浅春の便りを探しに浅間山に赴きました。

コナラもクヌギも全て葉っぱを落とし、とても見晴らしのいい浅き春の浅間山です。

幹だけになった雑木達の線の美しさに見とれ、

その幹越しには、どこまでも冴え渡る青空と白い雲を望めます。

とても爽快な雑木林の中で、最高のお昼時を過ごし、

午後からはますます気分良く、自転車小屋の材料を刻みます。

一本一本丹念に刻み終わるとすぐにでも組み立てたくなるもので、

棟木から軒桁に垂木を渡してみました。

ごくごく簡単な刻みの木組みですが、陽だまりの中で、

こうしてピタッと収まってくれるととても気持ちが良くほっとします。

草屋根を乗せるため頑丈にと考えて作っている躯体のパーツがだいたい揃いました。

どんな小屋になるのかわくわくしながら、一手ずつ丁寧に進めています。(T)

草屋根

立川での今年最初の庭作りは、雪かきから始まり、

留守番でしっかりと家を守るワンチャンの好奇心旺盛な視線を受けながら、

無事に終了しました。

次の現場へ向かう前に、材料の調達と心をニュートラルに戻すことを目的に、

一度、山梨県上野原市の陶陽庭で一時を過ごします。

上野原インターを降りて、陶陽庭へと向かう途中には、

大きなケヤキの木があり、そこには20を越すヤドリギが寄生しています。

望遠レンズでズームアップすると、新酒ができた時に古くからの酒屋さんで見かけるような、

こんな姿が捉えられました。

これは実は付けていないのかもしれませんが、

先日、ある花屋さんでは、ヤドリギの実として、

こんなものが売られていました。

陶陽庭の下を流れる川には、降雪から一週間以上経っていますが、

これだけ雪が残っていました。

陽当たりのいい場所では、今年最初のフキノトウも収穫できて、

出始めでまだ苦みが多く、それだけに格別に美味しい野生の味をいただけました。

この地で、原点に還り、また次なる庭作りへと準備を進めます。

次の現場は、昨年10月に主庭が完成した吉祥寺の庭で、

駐車場奥に自転車小屋を作ります。

まだ小学生の頃に、『独りだけのウイルダーネス』という本を見て、

その作者の生き様と、

彼がアラスカの地でセルフビルドで作った草屋根の小屋に魅せられ、

父の教えを請いながら、草屋根を乗せたミニチュアのログハウスを作ったことがあり、

それは今でも大切にとってあります。

本に載っていた写真を、よくよく観察して構造を考え、

木を一本一本削って組み合わせ、窓枠はマッチ棒で作り、

屋根には本当の芝生の葉っぱを乗せてあります。

人生に暗中模索し、旅を続けていた頃も、

各地で日本古来の芝棟や海外が起源の草屋根を目にしてきました。

そして、次の現場では、修行中の身ながら、

20年来思い焦がれてきた草屋根を、

実物大で作ることに携わることができます。

そんなチャンスをくださったお客様に感謝をすると共に、

ただ草屋根を作ったというだけでなく、

美しい庭という風景の中にさりげなく馴染む美しい草屋根の自転車小屋作りで、

その一助となれるよう気持ちを引き締めているところです。(T)

柔らかな陽のなかで

今年初めての庭づくりが終盤を向かえています。

大雪のあとは天候にも恵まれ、スムーズに仕事が捗りました。

昨年の今頃に依頼を受けましたが、作業の段取りの状況などから、

1年後に着工という形を取らせていただいたお庭です。

キャンプや盆栽など多趣味な庭主様は、

写真奥に見える物置にあるアウトドア用品の出し入れを頻繁に行なうため、

物置までの動線の確保することと、陽当たりが良好なリビングの前に雑木を植え、

木陰をつくり夏の日差しを和らげる効果を望まれていました。

庭面積としては決して広くはありませんが、多種の雑木が入っています。

背が高く、しなやかな雑木が入ることで、圧迫感はなく庭に広がりをみせます。

新緑や紅葉はもちろん綺麗であると信じていまが、夏の暑さを樹木達によって

軽減できることを実感していただけたら嬉しいことです。

穏やかな冬の日、西日が柔らかく差し込み、光が美しく、

庭の完成を祝福してくれたように感じました。

庭は完成からがスタートです。

年々美しく、心地よく暮らせるように見守っていきたいと思います。

笑顔で向かえてくれた近隣の皆様、

長い期間お待ちいただいた庭主様、心より感謝いたします。

ありがとうございました。(F)

 

 

 

 

 

 

三寒四温


一年で一番寒い時期、大寒を向かえます。

東京では一ヶ月以上雨がなく、乾燥注意報が連日続き、手のあかぎれもいっこうに治りません。

朝晩の冷たい風にあたると身も心も縮み上がります。

そんな中、手入れの作業も一段落して、植栽の準備に取りかかりました。

畑の中は冷えた地面が凍りつき、霜柱で押し上げられた地面を歩くとサクサクと音を立てます。

土の道を歩くことが少なくなったせいか、霜柱に陽が当たり、

土の隙間からキラキラ氷が光る光景も、今ではなかなか見ることもできなくなってきました。

落葉樹の移植は葉の落ちている時期が一番良しとされています。

休眠期であるため多少の無理もでき、安心して動かすことができます。

ですが、ここまで乾燥すると土の中もパサパサで、土が溢れやすく、

根鉢も慎重に掘り取りを行なわないと樹木を傷めてしまいます。

2年後3年後に樹木の成長として差が出てくるので、決して手は抜けません。

いつ動かしても大丈夫なように、根っこを作っていく、

根回しをしていくことは造園の大事な工程です。

 

一晩明けて窓の外を見てみると、辺りは一面の雪景色。

雪はやはり嬉しくなるものです。

乾燥していた空気をしっとりと潤いで満たしてくれました。

畑にも良いお湿りになっています。

寒さは厳しく、外仕事をしている私たちにはちょっぴり辛いのですが、

寒い時期があるからこそ、春が待ち遠しく、心も弾んでくるのでしょう。

寒暖を繰り返しながら春に向かうこの時期に、

陽だまりの中に身を置くと不思議と心が落ち着きます。

ゆっくりと時間が過ぎていくような気にさせてくれる陽だまりが、

住まいの暮らしの中でごく自然に触れあえたら好いものです。

寒さから学ぶことも限りなくあります。

多くのことを学べるよう、感じられるよう、研ぎすましていきたいものです。(F)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛍舞う庭へ

庭作りの依頼をしてくださるお客様達は、庭に様々な夢を抱いています。

花畑に憧れていたり、芝生の庭を夢見ていたり、

私達の得意とする雑木の庭を希望されていたり、

お話を伺っている時間は本当に楽しいひとときです。

その夢に少しでも近づける事ができ、なおかつ愛情を持って接していただけるように

飽きのこない、年々環境の良い空間にするにはどうすべきかと悩み考えている事は

非常に苦しく大変な事なのですが、同時に楽しくてしょうがない瞬間でもあります。

こちらの庭主様も色々な夢を語ってくださいました。

そして「蛍が庭で舞っていたら嬉しいな」の一言から全ては始まりました。

敷地内に井戸を掘ることから始め、その水をうまく利用して蛍を孵す環境にしていきます。

和の要素と山の源流付近の自然な雰囲気を併せ持った庭が条件です。

循環させるため水を漏らすことはできず、コンクリートを分厚く下打ちした人工の川ですが、

見た目は自然そのものの渓谷と見紛うできであると自負しています。

ただ、少しでも庭を自然に近づけたいと思いながらも、やむを得ずこうした工法を

取ってしまうことはとても心苦しいことです。

工期やコストの面、絶対漏らせないという心配からの判断なのですが、

古来から工法で川底を粘土とグリ石を使って仕上げる方法があり、

それなら自然の状態に近く、呼吸のできる流れを作ることができるので、

今後、チャンスがあればやらせていただきたいと思っています。

工事を始めた当初の写真です。

おおよその図面しか書かないのが私のやり方です。

図面に縛られず、その場その場で当初のイメージを超えて、

木や石達が適材適所に収まっていく様はなんとも言いようがなく、庭作りの醍醐味です。

流れの川底の表面は自然の渓流のように化粧していて、

その上には落ち葉がいい感じで堆積して、やがて土に戻っていきます。

その土や腐葉土をカワニナは好みます。そのカワニナを蛍の幼虫は食べて成長していきます。

何年かかけてゆっくりと蛍の育つ環境を整えていく予定です。

当然、無農薬での庭管理となります。

決して簡単ではないと思いますが、この庭から様々な生命の営みを感じながら

素晴らしい生態系が築かれる事を信じ、人と生物達の共生が成り立ち、

自然の息吹を感じながら暮らすことができたら素晴らしい事です。

 

 

 

足下の意匠

まとまった雨が降り足下の悪い本日ですが、

庭主様が日々の暮らしの中で何度となく伝う園路、

そんな足下の意匠を今まで藤倉造園設計事務所が施工してきた中から特集してみます。

こちらは縁側から庭の真ん中にあるテラスへと続く園路を枕木と御影石、レンガで構成したもの。

(詳細はギャラリー・SD庭空間作りの軌跡・SD庭 )

こちらは流れのある庭で、

その川縁の雰囲気を出すために河原に自然とできた道のようなイメージです。

(詳細はギャラリー・KH庭 http://fujikurazouen.com/gallery

セメントを多少使ってはいますが、土の質感を損なわないよう仕上げた三和土。

うっすらと残った水面の上に枝葉の陰が揺れます。

同じ現場の伝いの佇まいです。

こちらは、塀に使われていた大谷石を再利用して構成した駐車場です。

枕木と奥多摩の石で構成した来客用の駐車場から、互い違いのウッドフェンスを抜け、

二段上がって庭へと続くエントランス部分です。

そこから玄関へは、奥多摩の石を細かく砕いた山道の風情で案内します。

(詳細はギャラリー・TY庭 http://fujikurazouen.com/gallery

ラインのきちっと通った石の伝いと流れを柔らかく包み込む苔の足下。

(詳細はギャラリー・NT庭 http://fujikurazouen.com/gallery

こちらはセメントを使わず苦汁と石灰で仕上げた本物の三和土です。

(詳細はギャラリー・TU庭 http://fujikurazouen.com/gallery

自然石を連ねて道にするのも味があります。

(詳細はギャラリー・SK庭 http://fujikurazouen.com/gallery

なんといっても自然の造形が一番です。

そんなモミジの絨毯で包まれているのは山梨県上野原市の陶陽庭です。

(詳細は空間作りの軌跡・陶陽庭 http://fujikurazouen.com/example)

華やいだ気分の時も、沈んだ気分の時も、

足早に出て行く朝も、疲れて帰ってくる夜も、

日々変わることなく踏みしめる伝い、そんな足下の表情は様々です。

そんな中から、庭主様の日々の暮らしに寄り添った佇まいを引き出していきます。(T)

8年目の手入れ

この日の現場は千葉県市原市。

朝五時半に府中の事務所を出発し、車中で睡魔に襲われる頃、

市原の山中は霧の中でした。

この絵は、川合玉堂の「溪雨紅樹」

(山種美術館HPよりhttp://www.yamatane-shop.com/product/335

ですが、庭が完成して八年目の手入れをしに、霧中の現場へ到着して見た風景は、

この絵を想起させました。

現場へ到着すると慌ただしいもので、霧に霞んだ幻想的な風景は写真に収められませんでしたが、

これは、それが微かに残る様子を朝の一服の時間に撮ったものです。

この地では、木々を伸び伸びと育てることができるので、自然樹形を損ねることもなく、

八年の歳月を経て、より健やかになってきています。

そして、この写真は翌日の手入れ終了後の写真です。

このカットでは、分かり辛いですが、トラック一台分の枝下しをして、

かなり光と風が通るようになっています。

この庭は、都内在住の庭主さまの別荘ですが、

近所に住まう80歳にもなるおばあちゃんが、時々カブに乗って颯爽とやってきて、

林床を清めてくれています。

そんな風にして大切に慈しまれている庭は、一年ぶりに手入れに訪れても、

全く荒れた感じがなく、雑然ともしていなくて、むしろ清涼感に包まれています。

現場へ着いてもとても気分がよく、枝下しのピッチもぐんぐん上がります。

作業後に、流れへ水を流す時間は至福の一時です。

この写真からは、木立の雰囲気と庭の清潔感が伝わるのではないでしょうか。

私達の手入れはほんの一助で、この状態を保っている最大の功労者は、

さきほどの80歳のおばあちゃん、野口さんです。

とても若くて、元気で、明るくて、こんな風に歳を重ねたいと思わずにはいられない

素敵な方で、なんともいえない良い顔をされています。

なので写真を撮って載せたかったのですが、叶わなかったので、来年こそはと思っています。

かつて「照葉して名もなき草のあわれなる」と詠んだのは富安風生ですが、

この庭にある雑木と片付けられてしまう名もない木々を愛で、

私達もまだ少し早いながらも、紅葉狩りをしてみました。

とはいっても、ちゃんと、それぞれ立派な名を持っているもので、

以下に挙げた写真に写っている木々は庭にある沢山の木の一部です。

ドウダンツツジ、ダンコウバイ、ジューンベリー、ナンテン、コハウチワカエデ、

ハウチワカエデ、ムシカリ、リョウブ、オオモミジ、ヒサカキ、アブラチャン、マユミ、

ツバキ、ミヤマガマズミ、カラスウリ、ソヨゴ、ニシキギ、クロモジ、ヤマコウバシ、

サワフタギ、オトコヨウゾメ、ギボウシ、ハラン。

まさに色とりどりです。

ダンコウバイの葉とカラスウリの実を持ち帰り、

こうして部屋に飾ってみるのも一興かもしれません。

この市原の庭は、作庭例の中のギャラリー・KN庭(http://fujikurazouen.com/gallery)

でも紹介しています。

是非、ご覧ください。(T)