「雑木の庭の創始者」である近代庭園の巨匠、飯田十基氏の自邸です。
東京都心にありながら、足を踏み入れると自然の雰囲気、空気感が漂っていて、ほっこりと優しい気持ちに包まれます。
作り手の腕の良さを見せないさりげなさ。ずっと眺めていて飽きのこない庭。
近代造園史上、重要な意味を持つこの『旧飯田十基邸の庭』もまた、消滅という定めから逃れることは出来ませんでした。
8月上旬、最後の見学会が開かれました。閑静な住宅街のため、人数を絞っての公開となりました。
初めて飯田邸を訪れたのは10年ぐらい前、石正園代表、平井孝幸氏に連れて行っていただいたのが最初です。
流れが庭を横断しているのですが、実に巧みな流れで、少量の水でこんなに表現出来る凄さに驚のを記憶しています。
今回で4回見せていただきましたが、見るだびに新たな発見があります。
植栽も雑木ばかりではなく、梅やハナミズキ、カルミヤなど里木も植わっています。
本来ならば雰囲気を出していくために山木でまとめ、里木は外していきますが、
名人であると関係ないですね。
結局、何の樹木が植えてあるではなく、空間性や方向性、間の取り方や強弱、高低差など、
素朴な材料でメリハリのある仕事をすることで、流れる空気は違ってくるのだと感じております。
形あるものはいずれ壊れ、滅びてしまい残念ですが、幻の庭園を見て感じることが出来たことは
幸せなことであり、少しでもその精神を受け継いでいき、次の世代に伝えていきたいと思っています。(F)