» 庭づくりの知恵 -病虫害対策について-

地球とのつながり

四季折々の情景に美しさを感じるのは、人だけでなく同時に多様な生き物が呼吸をしているからではないでしょうか。足下から生き物の気配が伝わってきて、地球とのつながりを感じられる空間を作りたいと思っています。

共存共生

そんな健康的で生態系豊かな空間を作るため、極力、化学農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤)は使いません。農薬を撒くと天敵である益虫や植物にとって有用な微生物まで殺してしまい、土壌も悪化させます。そのため、害虫が発生した時は、大発生となり、一度使うと、毎年使わざるを得ない悪循環になります。一匹の虫をも許さないのではなく、害虫も含めた多様な生き物と共存共生していく、良い意味での「適当さ」を大事にしています。

生き物達の脈動

今まで農薬を使っていた庭で、それをやめると、はじめは揺り戻しがあり、一時的に害虫が大発生することも考えられます。しかし、根気強く、共存関係を育んでいけば、土が健康になり、木も元気、虫達が戻ってきて、鳥を呼び寄せます。生き物達の微細な脈動を感じられる命溢れる庭です。

自生する木の混植を

その為には、土と植物と虫と鳥たちの関係を、じっと観察することが必要です。その地域に元々ある木は、淘汰され、適応して、生き残ってきた木なので強く、また単一の木ばかりを植えるのではなく、多様な木を混植することで、害虫の大発生を防げます。化学肥料は窒素分が多く、アブラムシなどを呼び寄せるので、避けた方が良いでしょう。

健康な庭作りのために

そして、剪定によって、光が入り、風が通るようにすることもとても大事です。虫が発生しにくいだけでなく、発生した場合でも、鳥や私達人間の目につきやすく、取り除くことができます。水場を設けたり、巣箱を作ってあげたりすれば、鳥達も喜び、心地よい空間になるかもしれません。

堆肥の自給自足

無農薬無化学肥料で、良い空間を作る為に、私達が取り組んでいることがあります。手入れでの剪定枝を、ただゴミとして無駄にするのではなく、枝は薪にし、葉は時間をかけて醗酵させ、堆肥にしています。まだ、実験中ですが、近いうちに完熟堆肥を自給自足し、お客様の庭から庭へと、循環させていくことができると思います。

庭の一番の理解者はお客様

生態系豊かな庭では、虫が発生しても、ピラミッドの上位の生物に捕殺される関係ができていますが、チャドクガなど人間に有害な虫で被害にあった時は苦しいものです。たいてい、私達は年に一度か二度しかお客様の庭へは伺えません。その時にできることは、剪定によって光と風を通すことが主です。普段から、お客様ご自身が庭に愛着を持ち、よく観察し、虫を早期発見して、取り除くことが何より最良のことです。

予防措置としての自然農薬

予防措置としては、私達は、木酢液にニンニクや唐辛子などを漬け込んだ自然農薬を試験的に作っています。庭の手入れや庭作りの暇を見つけての作業ですので、大量生産は難しく、手間のかかるものですので、それを利用する際は、お客様にも理解していただきたいと思います。それでも広がってしまったり、大量発生することもあるかもしれません。その場合には、やむを得ず、必要最低限の殺虫剤をピンポイントで使用する融通性も持ち合わせています。